福島第一原発では、13年前の東日本大震災の巨大地震と津波の影響で電源が失われ、運転中だった3基の原子炉で核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」が発生、大量の放射性物質が放出されました。

1号機から3号機で溶け落ちた核燃料が周りの構造物と混ざり合った「核燃料デブリ」はあわせておよそ880トンにのぼると推計され、冷却に使う水や地下水などが汚染水となって増え続けています。

この汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含む処理水は1000基余りのタンクに保管され、処分が懸案となってきましたが、東京電力は、去年8月、政府の方針に従い、基準を下回る濃度に薄めた上で海への放出を始めました。

ただ、反発した中国による日本産水産物の輸入停止措置は、半年余りたったいまも続いていて、影響は長期化しています。

また汚染水を処理する過程では、去年10月に放射性物質を含む廃液を浴びた作業員が一時入院したほか、先月7日にも浄化装置から放射性物質を含む水が漏れるトラブルがあり、地元の福島県などからは東京電力の安全管理に厳しい目が向けられています。

一方、廃炉最大の難関とされる「核燃料デブリ」の取り出しをめぐっては、今年度末までに2号機で試験的な取り出しに着手する計画でしたが、装置の投入が進まずに、ことし1月に断念しました。

改めてことし10月までの開始を目指していますが、取り出し開始の延期は3回目で、当初の計画から3年近く遅れることになります。

また、3号機で始めるとしている本格的な取り出しは開始できる見通しも立たない中、今月8日、国の専門機関が、本格的な取り出し向けて原子炉などに充填(じゅうてん)剤を流し込んでデブリごと固めて取り出す新たな工法を一部で活用するよう提言しました。

東京電力は、今後1年から2年ほどかけて実現性などを検証するとしていますが、提言をまとめた前の原子力規制委員会委員長、更田豊志さんは「廃炉全体のロードマップを考えるといつまでも手をこまねいているわけにもいかないので、一つの転機となるよう提言させてもらった」と話すなど、最長40年で廃炉を終える計画は不透明さを増しています。