各国の企業活動における人権問題などを調べて対応を促す「ビジネスと人権」作業部会は、スイスのジュネーブで開かれている国連人権理事会の会合で、去年の夏に日本で初めて行った調査結果を報告しました。

作業部会の報告書では、旧ジャニーズ事務所の元社長、ジャニー喜多川氏による性加害問題に対し、「引き続き深い憂慮を抱いている」とした上で、被害を申告した人への補償について「救済を求めている被害者のニーズを満たすにはまだ遠い」と指摘しています。

このほか、賃金や管理職登用などにおける男女格差や、東京電力福島第一原子力発電所で廃炉や除染作業などを行う作業員の賃金や健康の問題、アニメーション業界の長時間労働の問題などの課題を指摘しています。

その上で、日本に政府から独立した人権機関がないことに深い懸念を示し、救済を求める上で障害が生じる可能性があるなどとして、人権機関の設立を勧告しています。

作業部会の議長は「日本には人権問題に関する構造的な課題がある」とした上で、「旧ジャニーズ事務所に所属し、性的虐待と搾取の犠牲となった数百人のタレントたちや、福島第一原発事故の除染作業に関わった作業員について、救済へのアクセスが引き続き欠如していることに早急に対処するため、政府と民間の努力を強化する機会だと捉えた」などとする声明を出しました。